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秋の朱鞠内湖に挑む【11月】

皆さんこんにちは。FiSHVELのキヨニーです。
今回は北海道の大自然を独り占めしながらアイヌの神へ出会う秋の釣行日誌。
憧れの地、朱鞠内湖へ訪れました。
#本記事は2022年秋の釣行記です。

・イトウの聖地、朱鞠内湖へ

 複雑な地形と無数に広がるポイントの数々に陸っぱりの限界を感じた矢先、「渡船サービス」の存在を知った私はアレコレ考える前に予約を入れることにした。「公式LINEにて予約受付」と朱鞠内湖のHPに記載されていたので早速トークにて希望日時等を送ったが、待てど暮らせど返信がなかったため仕方なく直電した。サービス開始直後だったのかは不明だが、既読が付いて数日間音沙汰なしでは不安になるほうが普通である。
#ご予約の際は注意してね

 11月上旬の当日、受付にて記入物を済ませ遊魚券を購入し、持ち込むタックルの最終確認に入る。今回用意したのはi字系とビッグベイトをメインに据えたバスタックル2本。ルアーなら7〜9ftのロッドが主流の朱鞠内湖だが、あえて6ftクラスのバスタックルで挑むのはバスフィッシングの考え方でイトウに迫りたかったからだ。オススメのミノーやスプーンを遠投して巻くことを否定する訳ではないが、せっかく関東からやってき来たのだ。そこで培ったモノを試すのも一興だろう。

 午前5:30。渡船の時間が訪れると、自分を含め10数名のアングラーが湖畔に集まった。まだ薄暗いが、目を凝らすとやはり8ft前後のトラウトロッドがほとんどを占め、ガイドには10cm前後のミノーがちらほら。残りはフライフィッシングと言ったところか。朱鞠内湖アングラー達が長年積み上げてきた経験が今日の最適解をソレとするのであれば、新しい攻め方を開拓するのが私の役目と言えよう。

 出船して15分程。本日私がお世話になる小さな島が見えてきた。少しポイントの話になるが、渡船で行ける場所はたくさんあり、初めて行くとなると選ぶだけで時間がかかる。と言うより多すぎて決められない。季節によってベイトの動向も変わるので、ここは素直にスタッフへの相談が吉と思う。今回は初めての朱鞠内湖なので、「危険も少なく、人も少ない場所」とお願いした。もちろん撮影もするので他の釣り人へ迷惑が及ばないよう配慮したオーダーだが、これぞ杞憂、この島に降りたのは私1人だった。
#2023.10.13、朱鞠内湖HPにて渡船は2名以上での利用が義務付けられました。
その他利用に関するルールも朱鞠内湖HPで要確認くださいませ。

 ボートが去って数分、水面も落ち着きを取り戻した頃、そこに残ったのは「静寂」そのものだった。鏡面と化した湖面には雲間からさす朝日と天地が逆さに広がり、名残惜しいかのように薄れる朝霧は輝きつつも立木をすり抜け空へ還っていく。朱鞠内湖でしか出会えない最高のひとときに、贅沢にも1人どっぷり浸かっているのである。もはや竿を振らずとも良く思えるほどの光景だ。

・幻に挑む

 グーグルマップにて島周りの地形をザッとチェックする。大きな沈み物は見当たらないものの、南西側はどうやら対岸と浅く地続きになってそうだ。朝一はこの岬の日陰側が1番美味しそうである。パイロットルアーはナギサ65sp。風も穏やか、湖流もそれほど感じないのでi字系で様子を見る。もちろんクランクやシャッドで直接駆け上がりを当てても良いが、警戒心を考慮すると静かでかつ食い気のあるヤツを引っ張り出せると踏んでの選択だ。伴って存在感は小さいのだが、クリアな水質と水面を利用する点でその心配はなさそうだ。※タックルの詳細は文末にて。

・答えは早かった

 ベイルアームの奏でるクリック音がなんとも心地いい空の下、狙いの岬へジリジリとよりながらキャストを繰り返す。遠くで水面をもじる小魚は少なからず確認できるが、未だ水面を割るような捕食シーンはない。岬を過ぎるとなだらかな駆け上がりに立木とスタンプが点在するいかにも釣れそうなエリアに入るが、大きな変化は見てとれないので広範囲に数投して引き返す。折り返しの岬、日陰側をシャローに向かって引ける絶好のコース。巻き速度も若干早めにと試した一投目。バスや雷魚のような派手さはないが、容赦なくねじ伏せるように水面が渦を巻いた。

 刹那、確かな重厚感が手元に伝う。バチっと決めたフッキングと同時に尾鰭が湖面を激しく叩いた。強めにかけたドラグもジリリと鳴き続け、ラインは立木の隙間を切るように走る。ロッドが、リールが、ラインが、それぞれ魚に呼応し響いては大自然に吸い込まれた。

●実釣動画はコチラから【素晴らしき朱鞠内湖のぬしへ挑む。】

 オレンジの水飛沫を全身に浴びようやくネットに収まってくれたのは、王者の貫禄を纏いはじめた70cmほどのイトウだった。艶やかな藤色とピンクが浮かぶ横顔に、独特のマダラ化粧がなんとも美しい。背中のブラウンが反射しては多彩な輝きを魅せ、鬼の名に違わぬ鋭くも奥深い眼光についつい目を奪われる。体やヒレに傷一つ見当たらない、朱鞠内湖が育んだ完璧ともよべるベストコンディション。ずっと眺めていたい気持ちもあるが、根気のいる保護活動を行なってきた関係者の方々に支えられて出会えた魚。名残惜しいが水中から出すことなくリリースすることにした。何事も無かったかのように悠々と湖底へ帰る神の姿を、見送ることができる幸せを噛みしめた。

 至福。ほんとね、真っ白になるくらい。
 駄文もここまで。書くだけ薄れる気がして。

 世界で1番素敵なトラウトに
 最高の環境で出会えたお話でした。

【タックルデータ】
ロッド:エクスプライド266L
リール:アルテグラ2500SHG

ライン:PE0.8
リーダー:フロロ12lb
ルアー:ナギサ65SP
偏光グラス:ドリオ

ps.
 次の春、ここ朱鞠内湖にて羆に人が襲われる悲しい事件が発生した。運営サイドの管理体制などが問題視され、ルールの改正やカメラ設置などの、より安全を考慮した体制となった。詳しくは朱鞠内湖HPを確認してほしい。余談ではあるが、事件当日の午前中、私も現地で釣りをしていた。事件を知ったのはその日の夜の事であったが、思うところがたくさんあったのでその時の心境を収録した。興味のある方は是非覗いてほしい。たくさんの視聴者さん達から届いたコメントも併せて読んでいただけると幸いです。
【朱鞠内湖0514】熊が出た日に釣りに行ってたんだけどさ….【今一度見直す熊対策】

 次の瞬間、命を落とす可能性が常に付きまとう大自然の中において、人間の脆弱さを肌で感じる出来事だった。北海道に限らず、本州ではツキノワグマも生息し、その他、蛇や蜂、マダニなど大変危険な生物も多く生息している。今一度自然への敬意と畏怖の気持ちを再確認し、できる限りの準備をもってフィールドに向うことを強く心に刻む人なった。

kiyonii

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